「おい、勉。」
クラスメイトが俺を呼んでいる気がした。
「いい加減起きろ、もう昼休みだぞ。」
「睡眠学習が好きな奴だな、ホントに。」
クラスメイトが俺を笑っていた。
しゃあねぇ・・・・起きるか・・・・
机から顔を上げたら、クラスメイトの嶺志(りょうし)が俺を見ていた。
家が魚屋で、さらに親父が船乗りっていう家の一人息子だ。
ゆくゆくは家を継ぐことになるんだが、嶺志本人は、
(俺は石鹸を作る人になりたい!)
とかいっている。・・・・・正気か?
嶺志「ホ~ント、お前っていつも寝てるのなぁ。」
そこに、俺の家の近くに住んでいる、雪野(ゆきの)が入ってきた。
雪といっても、肌は日に焼け、オマケに一年の夏休みには既に部活でレギュラー入りを
果たした、「雪」という字が似合わない奴だ。
どちらかというと、夏のような奴だ。
そんな雪野を、俺たちは「夏野(かの)」と呼んでいた。
雪野「なのに成績は上の中・・・・、ホント、世の中おかしいわよね。」
ほっとけ。
嶺志「お?夏野~」
雪野「な、何よイキナリ・・・・」
嶺志「また黒くなったんじゃねぇか?四月中旬だっていうのに。」
雪野「な、なってないわよ!」
・・・・なってるって・・・・・。
スカートから覗いている、たくましい足が前より黒くなっている気がした。
雪野「ちょっと・・・何ジロジロ人の足見てんのよ・・・・?」
嶺志「ん~?おいお~い、お前の足フェチは本物か~?」
な、んなワケ・・・・・!
雪野「ま、いいか。足フェチ君からかっても面白くないしね~。
さぁ、弁当食べよっか。」
嶺志「おー、だな。」
をい。俺に変なレッテル貼るな・・・・。
雪野「午後からは新入生と対面式あるからね~。
ちょっと急いで準備しておいたほうがいいわよ。」
嶺志「俺は関係ないけどね。」
俺も関係ないな。
雪野「ちょっと、マサ!なに俺は関係ねぇみたいな顔してるのよ。」
ちなみにマサっていうのは俺のあだ名だ。
オレ「いや、だって実際関係ないし・・・・。」
嶺志「あぁ?お前新入生の先導と、司会頼まれたじゃんか?」
オレ「ん・・・・?・・・・・・・・・・・あぁ!!!忘れてた!!」
雪野「ちょっと、そんな大事な役忘れてんじゃないよ。」
嶺志「確か40分までに一年迎えに行くんじゃなかったっけ?」
オレ「そうだ!思い出した!夏野!!今何分だ!?」
夏野「ん・・・・・38分。あははー、間に合わないんじゃない?」
オレ「うがあぁぁーーー!!飯なんて食ってる場合じゃねーー!!」
俺はダッシュで教室を出た。
嶺志が何か言ってたような気がしたが、気にせずに猛ダッシュをした。
オレ「マジヤベェ・・・・、もう移動してるクラスあんじゃねぇか・・・・」
俺が先導するのは確か5組のはずだ。
あの教室か!!まだ大丈夫なはずだ!!!
俺は残り50mを、マリオ並にダッシュした。
あのときマントがあれば飛べてたかもしれない。
ガラガラガラ・・・・
・・・・・ん?ちょ、オイ!!
5組から誰か出てきた!ヤベェ!!このままじゃぶつかる!!
・・・「?」
どけぇーーーー!!!
・・・・「きゃ・・・・」
その子は反射でジャンプをした。
ヤバイ、この速さでぶつかったらこの子は吹っ飛んじまう!!!
オレ「くぉのっ!!!」
俺は神速で姿勢を低くし、スライディングをした。
ズザーー!!!!
ドゴォン!ガタガタガシャーン!
ドタドタドタ・・・・
ぐ・・・頭上に・・・机が・・・・山のよ・・・・うに・・・・
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・・・・「だ、大丈夫ですか~・・・?」
この声・・・・天使か・・・・?
俺は・・・・・・死んだのか・・・・・?
そしてこの一件が、俺たちの出会いとなったのだ。